バリアフリー
木造在来工法専業の工務店では無理?
姫路発吉備団子のアレ特有の問題かもしれないが、バリアフリー対応が弱すぎる。まあ、新築注文住宅がメインだから、バリアフリー改修といった小さい仕事は、やる気が無いのかもしれない。車椅子等の福祉用具は、体の状態が変化していくので、買い取りではなく、介護保険を使って、いつでもキャンセルできるレンタルを使うのが大原則。その流れの中で、住宅のバリアフリー改修も、限度額は低いが、本人負担1~3割で介護保険が使える。福祉行政とつながっていない工務店では、知識も経験も足りないというのが実態ではなかろうか。
特養の入居条件は、「要介護3」以上
要介護3が、どういう状態かは、検索すればわかることなので、詳しくは書かない。大ざっぱに言えば、寝たきり一歩手前か認知症が進んでいるか。2階へ上がれなくなったら、特別養護老人ホームへ入ればいい、といったとんでもない内容のメルマガを配信してくる会社があったので、速攻でメルマガ解除した。うちの親は、2階へ上がれなくなって20年になるが、まだ「要介護3」には到達していない。特別養護老人ホームへは、申し込めない。「要介護3」になったとしても、「申し込みができる」というだけで、入れるわけではない。名古屋市の場合を例に取ると、
令和4年5月1日現在
定員8920名 に対して、入居待機者11035名 である。
平均的な入居期間が5年程度なので、単純計算で約6年待ちとなる。寝たきりの前段階で申し込んで、はたして、生きている間に入居できるのか?というのが実態となる。現実的には、デイサービス等の利用時間を除けば、在宅介護で対応するしかなく、訪問診療・訪問看護・訪問介護の組み合わせになる。在宅介護が限界に来たら、医療系の老人保健施設(日数制限有)などでつないでいくしかない。
2階へ上がれなくなったら老人ホームへ入れ、ということなら、民間の老人ホームへ入るしかない。1人の入居で安くて月30万、そこそこのところだと月40万、50万になる。20年で計算すると、
30万 × 12 × 20 = 7200万
50万 × 12 × 20 = 12000万
ということになる。ホームエレベーター付きの豪邸が建つ。バリアフリー住宅で在宅介護ができるというのは、それくらいの価値がある。介護施設へ払った分は何も残らないが、自宅の建物だったら、資産として残る。
某社の従業員は、「勾配を緩くしておけば階段でいい」と言い放ったわけだが。彼女をお姫様抱っこして、階段を上り下りしてみたらどうか。日常的に出来る作業かどうか、経験してみるといい。
マンションに移り住むとしても、賃貸なら家賃、分譲なら管理費や修繕積立金がかかってくる。車に乗れる間は、駐車場代も。早死にすればいいが、長生きした場合に、年金+貯蓄で最後まで暮らせるのかどうか。
訪問診療や訪問介護を受ける際、駐車場の確保が重要。訪問介護の単価は厳しく、ガソリン代や駐車場代が会社から出ないケースもある。来客用の駐車場が用意されているマンションならいいが、入居者用の駐車場が不足していたり、周辺の貸し駐車場が手配できない物件も少なくない。入念に下調べしておかないと、入居後に大問題になる。
大都市の駅徒歩圏内に土地を持っているのであれば、バリアフリー対策としてマンションに移り住むというのは無い。マンションの高齢者用居室にトイレを増設したりすると、売却する時に買い手が付きにくくなる。自己所有の戸建て住宅であれば、駐車場代は要らないし、メンテナンスにお金を掛けられなかったとしても、固定資産税さえ払っていれば、自分が生きている期間くらいは、あまり先の心配せずに住める。サイディングや化粧ベニヤ、シート張りフローリング、カラーベスト、ALCといった、メンテナンスコストのかかる建材を使っていないことは大前提。
高気密住宅に、手すりを後付け?
手すりを付けると、お金がかかるし、健常者には邪魔だ!必要になったら、付ければいい、というご意見もあるようだが。手すりを後付けして、気密シートを破ったりしませんかね?断熱・気密の確保のためには、後から必要になるかもしれない貫通孔や下地は、予め用意しておき、後から加工することは極力避けるべきでは。私の知人の範囲内で、階段から落ちて死んだ中年が何人もいる。世間が狭いのかなぁ、と思ってしまう。
エレベーターの断熱・気密ライン
エレベーターというのは、基本的に断熱・気密ラインの内側の設備。基礎部分、エレベーターのピット部分の断熱・気密ラインの取り方に懸念があって確認したかったのだが、姫路発吉備団子のアレ系では、知識も経験もなく問題解決せず。別ルートで確認した。
結論としては、基礎断熱であれば問題ない、ということなんだけれど、基礎断熱+床下エアコンを採用している工務店で、エレベーターの施工実績がある工務店が全国的に見ても、ほぼ皆無。工務店の仕事は、昇降路の空間を作って、ピット部分の基礎を用意するだけ。後は、エレベーターメーカーが担当するので、難しいものではないはず。ネットで検索すると、床断熱とエレベーターのピット回りの部分的な基礎断熱の組み合わせをしている事例は出てきた。何だか、しっくりこない方法だな、と思っていた。気密については、かなり怪しくなるはず。
「PASSIVEHOUSE OPENWEEKS」で、話を聞いて、工務店では経験値が不足だから、設計事務所に依頼した方が良いだろう、という流れになった。大手ハウスメーカーが普通にやっていることで、高気密高断熱系の工務店では難しいことが案外ある、ということを認識した。地価の高い大都市の工務店が少ないということも関係があるだろう。施工実績は無いが、出来ます、というのなら、検討候補にはなる。出来ません、ということなら、工務店?大工の親方?ということになる。「階段でいい」と言い放つ会社は、何屋なんだろう?
実家のエリアは、決して高級住宅街ではないが、それでも、道路で囲われた1ブロックに1軒くらいは、ホームエレベーターを設置している家がある。特に珍しいという設備ではない。
名古屋で浸水・液状化ハザードマップにかからないエリアというのは、東部丘陵地。いわゆる高級住宅街も、このエリアに含まれる。傾斜地が多く、擁壁を作って平らな敷地を作る方法しか提案できない会社では、バリアフリーとの両立が不可能。RC地下車庫を作って、建物全部RCで作るか、地上部に木造を乗せるかして、車庫からエレベータで上がれる構造というのが、必須条件。傾斜地で混構造の建売を得意とする会社も何社かある。必要に応じて、設計事務所とコラボできる工務店でなければ、対応できないと考えて良さそうだ。
商業地域・近隣商業地域
建売業者やアパート業者で土地の奪い合いになっている現状。所有している土地の有効利用を考える必要がある。容積率を目一杯使う選択肢も持っていたい。容積率300%なら4階建て、容積率400%なら5階建てに対応できる必要がある。浸水対策で1階を車庫にする場合なら、車庫の一定割合が容積率不算入になり、さらに+1階必要。木造在来工法の工務店のメルマガからは、距離を置こうと思う。何かの参考程度にというスタンス。
交通量が多く、人通りも多い地域。仮に木造だとしても、1階リビングの場合、カーテンを開けられない可能性が高い。セキュリティや浸水時の垂直避難の問題もある。日当たりと風通しの悪い場所にしか庭が造れない。LDK+高齢者居室(+専用トイレ)を1フロアに作り、外と繋がった明るく開放的な空間に。という条件を設定すると、2階リビング+車庫屋根バルコニーという形にならざるを得ない。階段を使えない高齢者をどうやって2階へ上げ下ろしするのか、そこがスタート地点になる。お姫様抱っこして上げ下げするマッチョな工務店従業員もいるようだが。
広い空間が必要なリビングは、2階に作ったほうが、構造的に無理が少ないというメリットもある。
情報収集してみて思うこと
元建築CAD屋としては、断熱・気密・換気などの知識をupdateできれば目的は達成。画像のGPSデータもあったし、介護制度の知識不足、バリアフリーの経験不足、暴言接客など、色々と勉強になった。
軒を深く出して、重心の低い和風建築に、山取りの木を植えて、という家が似つかわしい場所って、名古屋では、東山動植物園の裏手とか、梅森方面とか。翠松園も合いそうだけど、町並みはわりとRC率が高い。高級住宅街は、RCが主流。一般的な市街地で、純和風建築は、町並みからは浮いた存在になる可能性が高い。まあ、別荘、別宅ならありかもしれないが。
高断熱・高気密の工務店は、木造軸組で家を建てることは専門知識があるのだが、実際にそれだけで満足のいく注文住宅が出来上がるわけではない。キッチンなら調理の知識が要るし、バリアフリーなら介護制度や介護機器の知識が要るし、ホームシアターを作るなら音響や映像の知識が要る。周辺領域の知識が足りていない人が多い気がする。外部の専門家に応援してもらうにしても、最低限の知識は必要。
やはり、木造専業でない設計事務所を探すのが、手っ取り早いかな。工務店も、設計事務所と連携できる会社を選んで。
土地価格と資材価格の高騰で、注文住宅の市場が変質してきている。敷地と床面積を小さくして価格を抑える工夫に全振りの会社と、コスト重視の案件も手がけるが、地域の資産家や富裕層の顧客も持っていて、最新の知見を惜しみなく実践して経験を積むことのできる会社と。私の立場としては、コストのことばかり言ってくる工務店に発注したくはない。車椅子対応が売りの会社が、バリアフリーは金がかかるから止めておけ、みたいな物言いをしてくるのには閉口した。費用の安い特別養護老人ホームへ入ることは困難を極める。民間の老人ホームへ入ったら、どれくらい費用がかかるのか?それを考えないといけない。
工務店のメルマガは、オッサンが書いている。一部の人は、ゴリゴリの男目線なんだよね。今時の流れに反して。
男が階段を使えなくなったら、人生最終盤の場合が多い。女性の場合は、まったく違う。女性の方が長生きするのだけれど、元々の筋肉量が少ない上に、閉経後に女性ホルモンが減少することによって、骨粗鬆症にもなりやすい。膝や股関節に問題を抱えている人も多い。病気で子宮や卵巣を摘出していたりすると、より影響が大きい。人によっては、20年、30年、あるいはそれ以上といった年数で、階段を使えない人生が待っている。新築時に考慮しておかないと、結局は建て替えか売却かという選択になってくる。家を建ててから閉経までって、それ程長い年数ではない。閉経後に問題が起きてくるまでの期間は、個人差があるけれど。
個人住宅でバリアフリーを必要とするのは、女性の割合が高い。加齢による女性の体の変化について、理解した上で論じる必要がある。
専門分野を極めるのはいいのだが、視野の狭い専門バカにはなるな、ということである。周辺分野にも通じていないと、問題解決ができない。一芸に秀でる者は多芸に通ず。通じていない会社のメルマガを読んでいても、ストレスになるだけなので、まとめて解除した。
それと、大都市と地方都市・郡部では、立地条件の環境が違いすぎる。田舎の常識?を押しつけられても困るよね、って思うことも多々ある。
これから先のことに関しては、個人情報に関わることなので、書かない。今後、建築・不動産の投稿は、木造在来工法にとらわれない内容にする。
建築関係の職人の世界は、親類にいるからよく知っている方だと思う。人当たりの良い接客を望んでいるわけではない。社会人としての最低限の素養は身につけようよ、ということである。